ペルシャ絨毯は、中東イラン周辺で生産が行われている伝統的な手法で作られる高級絨毯です。起源は非常に古く、紀元前の古代ペルシアの時代にはすでに生産されており、ペルシア文化圏を代表する優れた美術工芸品です。床に敷くだけではなく、壁に飾るものやテーブルクロスとして使用されるものもあります。ペルシャ絨毯の素材となるのは、最も多いのが羊毛であり、綿や絹を使用したものもあります。これらの糸を横糸と縦糸で組み合わせて織りあげていきますが、産地によって素材となる糸の組み合わせがある程度決まっています。
絹のみを使用したものもありますが、羊毛などに比べて非常に高価となる上に、耐久性が低いため時間の経過とともに価値が下がってしまいます。そのため絹のみを使用した絨毯はあまり作られておらず、その希少性から壁に飾る装飾品として使用される例が見られます。ペルシャ絨毯のデザインは産地ごとに異なり、更に家系や工房ごとに独自のものが継承されているために多くのバリエーションを持ちます。下書きを用意せずに職人の経験を頼りに作り出される伝統的な手法から、近年では下絵と色をコンピュータで読取り、絨毯のサイズに合わせて縮小拡大し、効率的な生産を行う場合も増えています。ペルシャ絨毯の共通するモチーフとしては、メダリオンと呼ばれる模様があります。これは絨毯の中心に大きな模様があり、その周囲を上下左右対称の模様で囲い、四方の隅が同じデザインになっているものを言い、最も伝統的なモチーフとなります。また、オーバーオールと呼ばれるメダリオンを用いらない絵柄のものや、幾何学模様を配したタイプもあります。幾何学模様の選択と整形・配列は無限のパターンを構成しており、これは唯一神の普遍性を象徴し、イスラムの精神性を表現したものとされています。そのほかモスクをイメージしたものや唐草模様、薔薇などの花模様、鳥や魚をモチーフにしたものやハンティングを行う人物像などもあります。ただし人物を取り入れた模様はイラン国内で流通するものに多く見られますが、輸出用としてはあまり採用されていません。絨毯の形としては長方形のものがサイズにかかわらず一般的です。ペルシャ絨毯は手織りのために様々な形のものが作られています。長さと幅が同じ正方形のものはデザインが美しく際立ちます。円形や楕円形のものは高い技術を要するため数は少ないですが、玄関や応接室によく合います。