ペルシャ絨毯という言葉は誰でも聞いたことがあるものですが、そもそもペルシャ絨毯とは何でしょうか。それは現在のイラン地方で伝統的に作られ続けている絨毯のことです。非常に歴史が古く、紀元前にまで遡る工芸品です。ペルシャ絨毯というと敷物というイメージがあり、実際に床に敷いている人は少なくありませんが、別の使われ方もされています。例えばテーブルクロスとして使う人もいれば、壁を飾るものとして使用されることもあります。
ペルシャ絨毯にはどのような歴史があるのでしょうか。現在発見されている最古のペルシャ絨毯は2500年ほど昔のものです。ロシアのエルミタージュ美術館にその絨毯が展示されています。大きさは283×200センチメートルにもなるもので、非常に洗練された織物技術によって制作されたものであることを伺いしることができます。この絨毯はスキタイ王の埋蔵品の一部として発見されました。当時の高貴な人々の埋葬に際しては、その遺体のそばに死んだ人が使用していた全ての持ち物も一緒に埋葬されました。この行為には無事に来世に行くことができるようにという願いと、そして来世でも同じ身分でありたいという願いを込めるという意味があったようです。この最古の絨毯はその地方にちなんでパジリク絨毯と名付けられました。
ペルシャ絨毯にはいくつかの素材が選ばれます。使用される素材は大きく分けると二つに分類することができます。それはウールとシルクです。シルクカーペットの特徴は軽くしなやかであることです。また、晴らしい光沢があり、見る人の目を引きつけます。この絨毯に使用されているシルクはカーシャン地方やイランの北部、またカスピ海沿岸などで生産されています。その中でも特に優れていると絶賛されているのがイラン北部で取れるシルクです。この地方は最高のシルクが取れる条件を満たした養蚕に最も適した風土といえます。またウールも使われます。ウールの中でも最高級のものと言われているのは、ホラサン地方で使われ取れるものです。起毛性に優れていて、絨毯にするにはこの上ない素材です。最高のウールを生産するための大きな条件の1つは、羊を寒さに厳しいところで飼育するということです。実際、気温が暖かな地方で飼育している羊よりも寒さの吉備石井山岳地方で育てた羊のほうが品質の面で優れています。また素材として羊の毛ではなく、ヤギやらくだの毛が使用されている地方もあります。