ペルシャ絨毯の素材、ウールとシルクの違いと選び方のポイント
ペルシャ絨毯の素材
ペルシャ絨毯には主にウール、シルク、コットンの3つの素材が使われます。縦糸と横糸にパイルを絡めるパイル織りがペルシャ絨毯の特徴ですが、縦糸と横糸、パイル糸の3つの糸にはそれぞれ特徴を生かした素材が使われる事が一般的です。
縦糸にはゆがみが少なく床になじみやすいコットンが使われることが多く、縦糸の8割以上を占めています。パイル糸が絹の場合には縦糸にも絹が使われることがあり、非常に細かく密度の高い絨毯が出来上がります。縦糸にも絹を使ったものとしては、イスファハンの絨毯が有名です。
横糸にもコットンが使われるのが一般的です。シルク絨毯の横糸も綿糸がほとんどですが、特別に絹を用いることもあります。ウール絨毯の横糸もほとんどの場合コットンが使われており、横糸に羊毛を使ったものはとても珍しいです。
ペルシャ絨毯の素材といった場合、現地イランではパイル糸に何が使われているかで判断します。つまり、パイルが絹であればシルク絨毯、羊毛であればウール絨毯です。これに対し、日本では多くの場合、縦糸や横糸も含めて絨毯の素材として紹介されます。縦糸と横糸、パイル糸の組み合わせは産地によりほぼ決まっていますが、絶対ではありません。そのため、縦糸や横糸、パイル糸それぞれの素材の組み合わせだけでは、産地を判断することは難しいです。
ウールとシルク、特徴と違い
ペルシャ絨毯の素材、つまりパイル糸の素材にはウールとシルクがあります。羊毛と絹は、原産国イランでは身近な素材として、古くから活用されてきました。繊維質に水分を含み汚れにくいこと、静電気を起こしづらいことなど、砂漠での生活に適している素材であることも見逃せません。天然素材の持つ特性を生かしたペルシャ絨毯は、その芸術性と相まって、現在では世界中で高く評価されています。
ウール絨毯に用いられるのは主に羊の毛で、品質は産地の気候や毛の部位、刈り方などによって異なります。平地や谷間など温暖な地域で育った羊の毛よりも、山岳地帯など厳しい寒さに耐えて育った羊の毛の方が一般的に良質です。また、おなかや足から取れる毛よりも、脇腹や肩からとれる毛の方が質が高いと言われています。イランの乾燥した気候で育つ羊の毛は、丈夫で弾力性があり、踏まれても長持ちするため絨毯作りに適しています。特にホラサン地方のものは、品質が良いことで有名です。中でも、生後8ヶ月から14ヶ月の子羊から始めて刈られるコルクウールは、最高級だとされています。耐久性に優れていることに加え、油分が含まれているため、踏むごとに光沢が出てくることも、ウールの大きな魅力です。これらの特徴から、ウールは踏まれることを想定した場所で日常的に使うのに適しています。
シルク絨毯に使われる絹は、滑らかな肌触りと美しい光沢が特徴の高級素材です。カスピ海南岸地方の気候は養蚕に適しており、イランでは古くから絹の生産が行われていました。絹はパイル糸の素材になるほか、縦糸や横糸にも使われます。シルク産地の中でも、クムは特に有名で、クムシルクと言えば高級ペルシャ絨毯の代名詞と言えるほどです。クムの絨毯は100%絹で作られており、素材の高級感と斬新なデザインで人気があります。シルク絨毯は打ち込みが良く、軽くてしなやかなのが特徴です。高価でデリケートな素材のため、床に敷いて使うよりも壁飾りとしてよく使われます。タペストリーはもちろん、家の顔となる玄関マットとして使う事もおすすめです。
ペルシャ絨毯の選び方
ペルシャ絨毯と言えばシルクの方がウールよりも高級だと言うイメージがありますが、絨毯の価値は素材だけで決まるわけではありません。ペルシャ絨毯は長いものでは数年もの時間をかけて、すべて手織りで作られます。手織りでないものはペルシャ絨毯とは呼べないのです。絨毯作りでもっとも時間のかかる「織り」の部分は、絨毯の価値を大きく左右します。細かい模様や強度を上げるために細い糸を使えば、製作期間はそれだけ長くなります。一般的にシルクの方がウールよりも細いため、値段は高くなりますが、織りに要する時間が長いことも忘れてはなりません。絨毯の価値は、素材だけでなく、デザインや織りなどから総合的に判断することが大切です。
ペルシャ絨毯選びでは、価格だけでなく、使う場所に適した素材を選ぶことも重要なポイントです。最も重視すべきなのは摩擦によるダメージで、リビングやダイニングなど人の出入りの多い場所は耐久性のあるウールを選ぶのが基本です。シルク絨毯は、人の出入りの少ない客間や書斎に適しています。日光による変色を避けるため、どちらも直射日光の当たる場所を避けて敷くことも大切です。
イランは日本と同じく、家の中では靴を脱いで過ごします。ペルシャ絨毯は、日本の生活様式にもなじみやすいのです。また、天然素材の絨毯は、冬はもちろん、夏も快適に過ごせます。芸術性と機能性を兼ね備えたペルシャ絨毯を、上手に生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。