ペルシャ絨毯の歴史と種類に関する豆知識
ペルシャ絨毯の歴史
昔ペルシアと呼ばれていた地域、現在のイラン周辺でペルシャ絨毯は生産されています。起源についてはっきりとしたことは分かっていませんが、現存する一番古いものは、ロシアにあるエルミタージュ美術館に保管されている紀元前5世紀ごろ作られたバジリク絨毯です。ペルシャ絨毯は、何点かヨーロッパ各地の美術館や博物館に展示されていて、その中でも傑作と言われており有名なのが、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館に保管されているアルデビル絨毯です。これは、1540年ごろにイランを支配していた人が作らせたという10メートル×5メートルの巨大な絨毯となっています。
ところで、昔の人たちは絨毯をどのように使用していたのでしょうか。19世紀後半まで、高級なペルシャ絨毯はもちろん一般人には手を出せるものではなく、一部の裕福な人たちのみが使用していました。主に外国の王族へ贈答品として送っていたと言われています。18世紀ごろ当時の王朝が終わったのを機に生産が一時途絶えていましたが、19世紀後半になると、イラン各地で再び生産が盛んになり、絨毯を扱う商人が増えました。ヨーロッパへの流通も増え広まっていき、今では世界に広がってイランを代表するものとなりました。
ちなみに日本では、豊臣秀吉が身に着けていたといわれている、ペルシャ絨毯を裁断して作られた陣羽織が京都の高台寺に保管されています。現在でも手織りはもとより、コンピューターなどを駆使しながら進化しているペルシャ絨毯ですが、次の章ではペルシャ絨毯の種類や特徴・魅力についてふれていきます。
ペルシャ絨毯の特徴・魅力
ペルシャ絨毯はとても高価なものです。しかし、価値に見合うだけの魅力があります。今回はその魅力の中から耐久性とデザインについてお話します。
まず、その耐久性が魅力の一つとして挙げられます。ペルシャ絨毯は長い時間を掛け、一つ一つ手作業で製作されています。その製作期間は短くて半年、長いもので数年の期間をかけて製作されています。そのため、一般的な絨毯の寿命が数年であることに対し、ペルシャ絨毯の場合は、定期的なメンテナンスをすることで50~100年もの長い期間使うことが可能です。さらに時が経つにつれ、色合いに深みが加わって落ち着きが増してきますので、購入時とは違った一面を見ることができます。ちなみに、生産から経過した年数によって呼び名があり、50年以上のものをセミ・オールドと言い、100年以上のものをアンティークと呼びます。
続いてデザインについてです。ペルシャ絨毯のデザインには種類があり、各デザインの特徴は生産地によって違います。いくつか例をあげると、産地クムでは、オールシルク製の絨毯が主流で、斬新かつ鮮やかなデザインが特徴です。クムのシルク製の絨毯は、敷く方向を変えることで色に変化がうまれるので、デザインの変化を楽しむことができます。次に産地ナインでは、ベージュやクリーム色を基調としたデザインが特徴です。そのデザインは日本のインテリアに合わせやすく、お部屋の印象が明るくなります。このように、生産地によってそれぞれ違った特徴がありますので、購入を検討される方は産地を比較し、自分に合った特徴の絨毯を選ぶことをおすすめします。
ペルシャ絨毯の手入れ方法
最後に、この章では、ペルシャ絨毯のお手入れ方法についてお伝えします。
この絨毯の唯一の弱点は、湿気に弱いところです。湿気を含んでしまうと、耐久性が弱くなったり色合いや形も変化してしまいますので、水回りの近くは避けたほうが無難です。また、梅雨時など湿気が多いと感じたら、絨毯を持ち上げてその隙間に風を入れるのも湿気を防ぐ一つの方法です。掃除機をかける場合は、絨毯の房というパイル目に沿ってゴミやホコリの除去をします。汚れを感じたときは、冷水で濡らした雑巾や布を固く絞って拭いてください。特にシルクの絨毯の種類は熱いお湯やアルカリ洗剤は使わないよう注意が必要です。絨毯は繊細なものなので、素材によって雑巾でふくときの力加減にも配慮をしましょう。また、日光に長時間当たることもよくないため、風通しのよい場所で陰干しをするのがよいでしょう。
普段から、耐久性を高める方法として、絨毯の向きを定期的に変えてみたり、同じところのパイルが消耗することを防ぐために、向きだけでなく敷く場所を変えてみてはいかがでしょうか。ちなみに保管方法ですが、巻くときに棒を入れて巻いていきます。ウール素材は虫食いになりやすいので防虫剤を一緒にし、日があたらない風通しのいい所を選び保存しましょう。シミがついてしまったり、本格的なメンテナンスなど自分では難しいと感じたら、絨毯専門の水洗いクリーニングがベストです。
このように、3章にわたってペルシャ絨毯について書きましたが、購入を検討されている方はこうした知識をふまえて役立ててください。