知って納得!世界のペルシャ絨毯の製造過程
本場手織りペルシャ絨毯に使用される素材
3000年の歴史を持つペルシャ絨毯は、世界市場の3割をシェアする大人気絨毯の1つですが、発祥はペルシャすなわち現代のイランです。日本では絨毯だけが有名となっているものの、本来ペルシャの伝統を受け継ぐ織物はタペストリーやテーブルクロスなど生活全般に及んでいますし、使うのは上層階級だけとは限りません。日本で一般に出回っているのはシルクの絨毯ですから見た目がきらびやかで高級感あふれたものばかりですし、価格もそれなりですが、本来のペルシャ絨毯は羊毛もしくは綿です。
というのももともと遊牧民であったペルシャの人たちが砂漠を旅する過程で生まれてきたものだとすれば、手間のかかるシルクではなく家畜として身近にあった羊の毛を利用したと考える方が自然だからです。絹は見た目は大変美しいのですが、傷みやすく繊細であるため人の足で踏まれる絨毯には本来不向きなのです。しかも蚕からの採取になりますから手間もかかる上に大量採取しにくいという事で、現地でも高級品扱いとなっています。それと比べて羊毛は大変耐久性があり厳冬では暖かく使えますから、厳しいペルシャの気候にもあっていたのです。
綿も多く使われています。原料に使用される羊毛は製造された地域で飼っていた羊の種類によって分かれます。一般的にはコルク種、マンチェスター種、キャメル種などがあり、縦糸によく使われています。横糸として一般に使われているのは綿ですが製造された地域によって横糸と縦糸の素材が少しずつ違ってきます。織り方やデザインに部族の特徴や風習または文化が色濃く表れてくるというのも大変興味深い事で、違いを見つけるのもペルシャ絨毯を選ぶ時の楽しみになるのではないでしょうか。ペルシャ絨毯というと各種文様が織り込まれていますが、お家芸のように地域ごとに製造されたゆえに、バラエティーに富んだデザインとなっているとも言え、飽きがこない魅力にあふれているとも言えます。
デザインから織りまで
羊毛や絹などの無地の縦糸に一本一本織られていく横糸は原色であらかじめ染められたものが使われますが、仕上がりに影響を与える重要な部分であるため注文を受けてから経験を積んだ専門職人によって行われます。ペルシャ絨毯は基本的に手織りですから完成までに数ヶ月から数年待つことになります。というのも染色から手を抜かない丁寧で細やかな作業で始まるからです。日本でよく見かける機織り機よりももう少し原始的な枠織りで数ミリずつ織られていくという、気が遠くなるような製造過程を経て唐草文様やアラベスクなど幾何学的な文様が織られていくのですが、大きなものになると6×4 フィートすなわち1.8m×1.2m程度のものになり、カーリと呼ばれるものになります。
このようなモチーフを使って織られるようになったのは16世紀に入ってからで、それ以前に発掘されたものを見ると、絵画的なデザインも作られていた事がわかります。いずれにせよ伝統的なモチーフを使う時は下絵なしで記憶を頼りに織られていきますが、創作文様の場合は原寸大のデザイン画を基に正確な寸法で織機に張られた縦糸を基にして織っていきます。縦糸を張っていくという製造過程を観察していると大変繊細な作業である事がわかります。
ペルシャ絨毯には両側に結びがついたものと平面のものとあるのですが、基本になる文様が織られた平面的な織りをパイル織りといい、後からパイル糸と言われる糸を手作業で絡ませていくのです。パイル糸に羊毛を使った場合はウール絨毯、シルクを使った場合はシルク絨毯というように種類分けされ、価格も変わってきます。パイル糸の絡ませ方にも地域ごとに違いがありますから、そうした違いにも注目して見ていくのも、絨毯選びの楽しみ方です。
丁寧なメンテナンスで長持ち
世界百カ国以上で取引されているペルシャ絨毯は糸染色から専門職らによる丁寧な製造過程を経て、わたしたちの元へ届けられている事を知れば、高級絨毯と評価される事も納得できます。しかも長い歴史と伝統にはぐくまれた、イラン文化の最高峰と聞けばなおさらです。通常ウール絨毯が一般的なのですが、絹が結びに入っているシルク絨毯の方が、むしろ日本では人気であり有名ですが、実はウール絨毯の方が汚れにくく痛みにくいため、絨毯に最適なのです。
遊牧生活が主流だった古代イランすなわちペルシャでは、王侯貴族らの寵愛を受ける形で、少しずつイラン文化に浸透していったわけですが、ペルシャ絨毯独特の文様は見ているだけで何とも言えない安心感と飽きのこない安定感があり、アートとしても興味深いものがあります。ただし良いものであればなおさら念入りなメンテナンスが必要です。
絨毯そのものは埃や刺激に強い性質を持っていますが、半永久的に元の状態を維持し続けるためにもクリーニングは絨毯専門サイトに依頼する方が最適です。ペットたちの臭いやあちこちにできたしみ、あるいはふさのほつれなど長年愛用していれば、これらの汚れが蓄積されて最初の輝きを少しずつ失っていってしまうのは紛れもない現実ですし、素人でクリーニングするには限界もあるでしょう。
プロに依頼すれば表面的には分からない内側に隠れている汚れまできれいに落としてくれますし、何よりも新品同様の美しい外見を取り戻せるのですから、利用してみる価値はあるでしょう。